スナップ用としてはとてもいい選択肢になるよ。まじで。
スマホのカメラ機能の充実っぷりに「コンデジはもう売れない」といわれていますし実際にそういう傾向は強いですよね。
でも、大きなサイズのセンサーを片手で扱えるボディに組み込んだ高級コンデジはまだまだ最前線を開拓し続けてほしい分野です。いま!目の前にあるシャッターチャンスを逃したくない!というときに、スマホよりもコンマ何秒かでも速く、着実に撮れるデバイスじゃないですか。
さて、この高級コンデジカテゴリは、静止画クオリティを追求したライカ、ソニーRX1系、リコー、富士フイルムと、ズーム倍率も高くて動画もイケちゃうソニーRX100系、パナソニック、そしてキヤノンのPowerShot Gシリーズがありますね。
今日ピックアップするのはキヤノンの最新機種である「PowerShot G7 X Mark III」。約3年を経てのリニューアルとなります。その実力、確かめてみましょう。
Canon G7 X Mark III
これはなに?: キヤノンの1インチセンサーコンパクトカメラ
価格:公式オンラインショップにて 9万9900円(税込)
いいところ:とにかくオールマイティ
残念:YouTube Live配信機能のハードルが高すぎる
グリップを大切にするカメラはそれだけで強い
基本的にはキープコンセプト。センサーサイズ(1インチ)、画素数(約2010万画素)、常用ISO感度(ISO125~12800)、レンズ焦点距離(24mm~100mm)、開放F値(F1.8~2.8)と2016年のPowerShot G7 X Mark IIと基本性能は同じ。
主なアップデートポイントはちょっとだけ軽くなって(319g→304g)、積層型センサーになって、Bluetooth接続に対応し、4K 30fps撮影ができて、単体でのYouTubeライブ配信に対応したところですね。映像エンジンもDIGIC 8となりました。
上面・背面のコントローラ部も基本的には同一。従来からのPowerShot G7 Xシリーズを使ったことがある人にとっては、いままでどおりの使い方で順当に性能を上げてきたと感じるでしょう。
はじめて使う人に、チェックしてほしいのはやっぱり前側のグリップでしょうか。普通に持っても人差し指がひっかかりやすく、自撮り状態でも親指がかかりやすいので、ガッチリと握り込める感覚があるんです。
万が一のためにストラップは付けるべきですが、ストラップレスでも不安感なし。これはライバル機と比較して大きなアドバンテージですよ。
コンデジらしからぬ直感的なダイヤル操作
PowerShot G7 Xシリーズというか、PowerShot Gシリーズ全体にいえることなのですけど、操作がしやすいのが最大のポイント。かちり、かちりと精緻さを感じさせる露出補正ダイヤルやモードダイヤル。
そして前面のコントローラリングによって、露出設定のキメが気持ちいい。マニュアルモードにしてもストレスなくスナップ撮影できちゃいます。
内蔵マイクは低ノイズで声もシャープに録れる
ところでPowerShot G7 X Mark IIIと同時にPowerShot G5 X Mark IIもリリースされました。基本的な性能はG7 X Mark IIIと同一なのですが、PowerShot G5 X Mark IIにはポップアップ式EVFがつくなど、より静止画撮影が楽しめる仕様となっています。
対してこちらのPowerShot G7 X Mark IIIは、動画もオールオッケーよ〜というカバーエリアの広さが魅力でしてね。ごらんくださいこのマイク。コンデジにあるまじきこのデカさ。
G7 X Mark IIIは外部マイクも装着できますが、アクセサリーシューのないコンデジ+外部マイクってかなり無理があると思うんです。セッティングするまでに時間がかかっちゃうし。
だからこそスナップ的な動画を撮りたいのであれば、内蔵マイクに注目するべきなんですよ。では内蔵マイクのテストも兼ねて、動画の作例をご覧あれ。
VLOGもこなせる
まずは自撮りからどうぞ。あえて背景に情報量ありまくり、明暗差もありまくりな遊歩道を歩いてみたところ、AFがピントを外すことがあったりして。顔検出+追尾優先AFにしていたのですが、光の状態が落ち着いている場所じゃないと厳しいのかもしれません。
手ブレ補正はいいですね! 約4段分とのことですが、しっかりと抑えられています。
気になるのがズーム動作。ちょっと遅い気がする。撮影中だけなんですよこんなにゆっくりなの。処理速度の問題かな? いやあ、でも最新のDIGIC 8搭載機だし...。動画用の味付けなのかもしれません。
スローモーション撮影もお手のもの。ぬるりとした水面の動きがたまりません。
多少気をつけないとならないところはありますが、VLOGを撮るためのカメラとして考えると良さげ。
ただしPowerShot G7 X Mark IIIになって搭載されたライブ配信機能はまだ使い物にならないという印象あり。設定が面倒くさすぎ! 初期設定でカメラをWiFiに接続、キヤノンのWebサービスに製品登録したあとYouTubeアカウントと接続...テキストで書くとカンタンそうだけどWebサイトのUIもわかりづらくて、かなり時間がかかってしまいました。一度設定してしまえばカメラ側から割と簡単にライブ配信できるようになりますが、配信のタイトルや概要欄はあらかじめスマホやPCのYouTubeで用意しておくか、テンプレートを使うことになります。ガジェット好きな人なら頑張って乗り越えられるハードルでしょうけど、コンデジを買う層の方々にとっては「なんかもう...ライブ配信はスマホでよくない?」になるんじゃないかな。
これはスマホやタブレット、パソコンなど、文字列を入力しやすいデバイスと比較するのはナンセンス。という問題でもあるんですよね。
マクロ撮影時は甘めのピント。食べ物や動物にはアリ
Lightroomでおもいっきしかすみの除去をかけてしまいましたが、水面および水中の様子もよく見える。ダイナミックレンジが広くないと、こうはいかないんですよね。そして、このレタッチ耐性の強さは、スマホがまだ追いつけない分野なんですよね。
無理のある姿勢で撮った=ブレやすいってことで、ISO値を上げてしまったために平坦さが出てしまいました。でもレンズがいい。ちゃんと背景ボケてる。
抜け毛もしっかりと解像してくれてらっしゃるISO800。動体ブレが怖いときもこれなら安心。
ところがテーブルフォトの近接撮影となると、悪く言えばシャープさが薄れる。よく言えば優しみあるトーンになってくるんですよ。
コイツをフルHDにズームアップするとですね。
こう、まったりとなるのです。まるで往年のフランス映画の絵作りのように。
シャープすぎるレンズにはごはんものや動物、ポートレートをあわせるのは難しかったりします。PowerShot G7 X Mark IIIの良さを引き出す手法として、硬めの被写体のときは寄りすぎないようにするのが吉です。覚えましたか? 僕は覚えました!
実は貴重な「オールマイティ」コンデジ
PowerShot G7 X Mark IIIの公式ECサイト価格は税込み9万9900円。安売りショップでは8万3000円台からのお求め(記事執筆時)となります。これだけの性能をブッこんできてこのプライスというのは、なかなかお買い得。
しかし...だいたい10万円の価格帯ってライバルが多いのも事実。ローリングシャッター現象が控えめでスポーツ写真も撮りやすいRX100M6は最安10万円ちょっと。静止画にこだわるなら欲しくなるX100F、GR IIIが9万8000円、24-360mmの光学ズーム搭載LUMIX TX2が8万円くらいですから。これらはそれぞれビビッドな個性の持ち主。比較するとPowerShot G7 X Mark IIIが地味に見えるかも?
いや、だからこそなんです。静止画も動画も、平均以上の画質と音質でスピーディに撮れる優等生さがPowerShot G7 X Mark IIIのいいところなんです。それにPowerShot G7 X Mark IIIはとてもコンパクトなのに、持ちやすいグリップがついているというアドバンテージがあるのを忘れちゃいけません。オプションのサムレストとか買わなくていいんです。ここまでカメラとしてバランスが取れているコンデジは貴重な存在。同じ条件で別のカメラを探してもなかなか見つかりません。
あなたがコンデジに求めるものはなんでしょうか。それがもし、スマホのようにどんなシーンにも持ち出せて安心して使えるカメラだというなら、PowerShot G7 X Mark IIIは間違いなく有力な1台です。
Source: キヤノン