加工しにくいチタンが使い続けられるわけ。あなたの知らない工業金属の王様「チタン」の話

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  • author 三浦一紀
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加工しにくいチタンが使い続けられるわけ。あなたの知らない工業金属の王様「チタン」の話
Photo: 小原啓樹

理想的な金属なんです。

我々が日常的に使ったり愛でたりしているガジェットやギア。いろいろな素材でできていますが、よく目にするのが金属だと思います。ノートPCならば、アルミニウムといった金属が使われていたりしますし、堅牢なカメラならマグネシウム合金が使われていることもありますね。

それでは、腕時計にはどんな金属が素材として使われているでしょうか? メインとなるのは、ステンレスですね。しかし、最近の腕時計界では、ステンレスと双璧をなす人気素材があります。それが「チタン」です。

チタンは、アルミニウムやステンレスといった工業製品で使われる金属の中でも、トップレベルに優れた性能を持つ素材なんです。たとえば、軽くて強い、という特徴はみなさんも聞いたことあるかもしれません。

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Photo: 小原啓樹

そんなチタンをこれまで30年に渡り使ってきたのが、シチズンの腕時計ATTESA(アテッサ)。今回、そのなかでも黒いチタンをベゼルやベルトに使った「ブラックチタン™️シリーズ」に新モデルが登場しました。シチズンが得意とするチタン加工処理を施していることが特徴で、“チタンの良さ”を存分に引き出したモデルとなっています。

そこで、ギズモード編集部は「ATTESAに使われているチタンとは、そもそもどんな良さがある金属なのか?」もっとチタンについて知りたくなりました。さっそく我々は、チタンに詳しい専門家のもとを訪れ、チタンについて学ぶことに。

チタンの特徴は「軽い」「強い」「錆びない」

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Photo: 小原啓樹
東京チタニウムは、埼玉県さいたま市岩槻区にあります。東武野田線(アーバンパークライン)の東岩槻駅から車で約10分。

チタンについてお話を伺ったのは、チタンを専門に加工する株式会社東京チタニウムの代表取締役社長・小澤良太さん。チタンを専門に加工する金属加工企業は日本でも数少なく、小澤さんはいわばチタンの専門家です。我々は、チタンという金属について疑問に思っていることを小澤さんにぶつけてみました。

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Photo: 小原啓樹
東京チタニウム 代表取締役社長・小澤良太さん

──ATTESAに使われているチタン、そもそもこの金属にはどういった特徴があるのでしょうか?

簡単に言えばチタンには「軽い」「強い」「錆びない」という3大特徴があります。

たとえば競合となる金属として、ステンレスがあります。ステンレスと比べると、チタンの重さはステンレスの約60%くらいになります。比重(*)でいうと、ステンレスは7.9ですが、チタンは4.51となっています。

*比重=ある体積の水の質量を1として、同じ体積の物質との質量比。たとえば水と同じ体積のステンレスを用意すると、水の7.9倍の質量になる。

──「強さ」に関してはどうでしょうか?

チタンのなかでも種類がありまして、「純チタン」と呼ばれているものは、実はステンレスよりも硬くありません。硬さがあるのは「チタン合金」というもので、純チタンにアルミニウムやバナジウムなどを添加することで強度を高めています。

では、チタンが何をもって強いのかというと、チタンは比重に対する強度、比強度が高いんですね。たとえば純チタンでは比重4.51で強度を割るところ、ステンレスは7.9で割るわけです。

──比強度が高いということは、たとえばステンレスとチタンで同じ強度のものを作ったときに、より質量を軽くできるということですね?

そうですね。

──もうひとつ「錆びない」という特徴についてはいかがでしょうか? ステンレスも錆びないと言われますが。

チタンはステンレスに比べても錆びにくいです。 工業の言葉で言うと 「錆びない」というのは嘘になるのですが、日常生活内ではステンレスよりもチタンのほうが全然錆びません

時計のベルトという観点で見ると、チタンの表面に形成されている不動態化被膜によって金属アレルギーが出にくい、という特徴が一番のメリットなのではないかと思います。

チタンの弱点は「スレ」と「加工のしにくさ」

──いろいろな特徴があるチタンですが、弱点はありますか?

純チタンでいうと、先ほど言いましたように柔らかいことが弱点です。これはチタンの耐摩耗性と関係していて、腕時計でいうと摩擦(スレ)に弱いんですね。そして、耐摩耗性がチタンの加工のしにくさにも繋がっています。

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Image: CITIZEN シチズン時計
※金属の硬さを示す「ビッカース硬度」。素材にダイヤモンド製の圧子を押し込むことで測定される。ATTESA ブラックチタン™️シリーズには「デュラテクト DLC」が使われている。

──どういう面で加工しにくいのでしょう?

チタンは粘り気があるというか、切削するときにサクッと削れないんですね。工具にチタンがくっついてしまいます。 アルミニウムやステンレスは綺麗に切削ができるのですが、チタンは削りかすが工具に付着してしまうんです。

──切削しにくいと、どういうデメリットが出てくるのでしょうか?

削りかすが付着すると、精度の高い作業がしにくくなります。ステンレスならば1回で済む作業を、チタンでは粗加工と仕上げ加工を2回やらなければならなかったりするので、手間も時間もかかるんですよね。

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Photo: 株式会社 東京チタニウム
チタンの切削機。削りかすが工具に付着しやすいため作業に気を遣う。またすぐに刃こぼれしてしまうため、頻繁に交換する必要があるという。

──そうするとやっぱりコストもかかると?

そうです。加工するのにもコストがかかります。

また、切削のほかにも溶接も手間がかかります。チタンは非常に酸化しやすい金属なので、高温の状態が続くと酸素とどんどん結合して、素材がボロボロになってしまいます。なので、溶接も特別な機械を使って酸化させないようにしながら行なう必要があります。

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Photo: 小原啓樹
チタンの溶接は特殊。そのためチタン溶接技能者という資格があるほどだ。

チタンが高級な金属なのは作るのに手間がかかるから

──チタンといえば高級な金属というイメージがあります。希少価値は高いのでしょうか?

実はチタンの原料というのは、全金属の中でも地球で5番目くらいの埋蔵量があります。ただ、それを金属チタンにすることが難しいんですね。

──資源はあるけれど、使えるようにするのが難しいと。

そうです。

──金属チタンになるまでに、一体どのようなプロセスがあるのでしょう?

金属チタンの原料となるのは酸化チタンという物質で、それを多く含むルチールという鉱物を使います(人工的に酸化チタンの含有率を高めた合成ルチールも使う)。そして、そこにコークスなどを混ぜて、塩素で塩化させます。

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Photo: 小原啓樹
左がインド産の合成ルチール、右が中国産の合成ルチール。ルチールには金属チタンの原料になる「酸化チタン」が含まれる。

固体のルチール内では酸化チタンという状態ですが、一度塩化させると四塩化チタンという液体になります。そして四塩化チタンにマグネシウムを入れて塩化マグネシウムを合成し、残ったチタンを取り出します。

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Photo: 小原啓樹
スポンジチタン。スポンジといっても柔らかくはない。

それらの工程を経ると、スポンジチタンという塊になります。スポンジといっても柔らかいわけではありません。四塩化チタンからマグネシウムが抜けた部分が鬆(す)になっているんですね。

その後にスポンジチタンを砕いてから溶解し、チタンのインゴットを作ります。インゴットの表面は酸化しているので削る必要がありますが、あとはステンレスや鉄と同じようにロールと呼ばれる板状にしたり、棒状にします。

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Photo: 小原啓樹
東京チタニウムの工場にはさまざまな太さの棒状チタンがある。ここから切削や溶接をして製品化していく。

ただし、チタンは非常に酸化しやすい性質を持っているので、酸素と触れないようにすべての工程を真空、またはアルゴンやヘリウムといった不活性ガスを充填したタンクで作業を行なわなければなりません。

鉄ならばコークスと一緒に炊くだけで取り出せるのですが、それではチタンはすべて酸化してしまいます。なので、とても精製に手間がかかるんです。

──チタンが高価なのは、希少価値が高いわけではなく、精製に手間がかかるからなんですね。

そうなんです。チタンは難産なんですね。

──ステンレスに比べてどのくらいの価格になるんですか?

kg単価でステンレスの10倍以上になります。

ブラックチタン™️の黒には意味があった

──ATTESAのブラックチタン™️シリーズは、純チタンの表面を炭素や水素が入ったガスで硬化させる「デュラテクトDLC」という製法を用いています。これは一般的な企業でできる技術なのでしょうか?

一般的な加工業ではできません。先ほど言ったように、チタンは酸化しやすい物質なので真空で加工をするための炉が必要になるんです。

あとチタンの色を変える場合は、電気を使った陽極酸化法という方法を使うのですが、この方法では白と黒色は出ないんです。そこで炭素で黒色を表現できる、DLCを使う必要がでてくるわけですね。

しかもDLCによって色を黒にするだけではなく、炭素で硬化されることで強度もアップできるんです。

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Photo: 小原啓樹
東京チタニウムでは、オリジナルの商品としてチタン製医療機器の開発を進めている。ちなみに開発に使っている機器はシチズン製とのこと。

純チタンの弱点を克服した「スーパーチタニウム™️」

軽い」「強い」「錆びない」という多くのメリットがあるチタンですが、一方では傷つきやすさや加工が難しいというデメリットもあることがお話を聞いてわかりました。

そのデメリットはチタン合金を使えばある程度は解消できます。しかしシチズンは肌に優しい純チタンにこだわり、独自の表面硬化技術「デュラテクト」を施した素材「スーパーチタニウム™」を開発。チタン合金以上の表面硬度を誇る、軽量かつタフな腕時計となりました。

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Photo: 小原啓樹

今回、ATTESAのブラックチタン™️シリーズに新登場したのは、全部で3モデル。すべてのモデルに光発電技術「エコ・ドライブ」を採用しています。また全機種ともに、チタンを熱間鍛造する過程で発光するオレンジ色を秒針にあしらい、ブラックボディにオレンジのワンポイントが映えるデザインとなっています。

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Photo: 小原啓樹
エコ・ドライブ電波時計ダブルダイレクトフライト AT9097-54E

エコ・ドライブ電波時計ダブルダイレクトフライト」は、2つの都市の時間を一瞬で入れ替えられる「ダイレクトチェンジ」機能搭載の電波時計です。また、ベゼル部分は磨きの仕上げを変えた二体構造になっており、奥行き感があります。価格は16万円(税抜)です。

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Photo: 小原啓樹
エコ・ドライブ電波時計ダイレクトフライト AT8166-59E

エコ・ドライブ電波時計ダイレクトフライト」は、ワールドタイム対応の電波時計。装飾を抑えたシンプルかつソリッドなベゼルには6つのスリットがあり、独特の力強さを演出しています。また、文字板にアラビア数字を採用することで、時間の確認がしやすく、モダンなデザインになっています。価格は13万円(税抜)です。

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Photo: 小原啓樹
エコ・ドライブ クロノグラフ CA4394-54E

エコ・ドライブ クロノグラフ」はATTESAシリーズの定番ともいえるベーシックなフォルムが印象的。数種類のマットなヘアライン仕上げを使い分けることで、角度によって輝きが異なります。シンプルなデザインで、普段使いに最適です。価格は7万円(税抜)です。

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もちろん、通常のチタンでは出せない「黒」という点も見逃せません。実際にブラックチタン™️シリーズを手に取ってみると、ステンレスでもアルミでもない独特なマットの質感にブラックの精悍さが際立ちます。

加えて軽量さも魅力。見た目は重厚感があふれますが、手に取ると拍子抜けするほど軽く、100gを切る重量は金属ベルトを持つ時計としては破格の軽さです。腕時計は一日のなかで長時間身につけているものですから、軽いほうが手首、腕への負担も軽くなります。

紹介したブラックチタン™️シリーズは、ビジネスシーンだけではなくカジュアルな装いのプライベートでもしっくりくるデザイン。ブラックは手首のワンポイントとなり締まった印象を与えます。

ATTESAはチタンのメリットを生かし、デメリットをシチズンの独自技術で乗り越えた「いいとこ取り」な腕時計

工業製品に使われる金属のなかで王様といえる「純チタン」と、チタンのデメリットを克服するシチズンが培ってきた独自の硬化技術「デュラテクトDLC」。それらを融合させたのがATTESA ブラックチタン™️シリーズなんです。

見た目の高級さだけではなく、軽さ強さといった実用的な面も兼ね備えており、デイリーユースからビジネスシーンまで幅広く使えるのも特徴です。

もうすぐ新年度。心機一転するための自分へのプレゼントに、また新生活を始める家族や友人へのプレゼントに、選択肢のひとつとして入れておくといいでしょう。


Photo: 小原啓樹
Image: CITIZEN シチズン時計
Source: CITIZEN シチズン時計

(三浦一紀)