Xperiaといえばカメラ、カメラといえばXperia。
それくらいXperiaのカメラ機能に信頼を寄せている人も多いのではないでしょうか。もちろん、カメラだけでなく総合的に見てXperiaがスマートフォンのトップを走るブランドのひとつであることは今さら言うまでもありません。同世代のスマートフォンとくらべても性能はつねにトップクラス。洗練されたデザインは宝飾品のように「持つ喜び」を感じさせてくれます。
とはいえ、多くの人が日常的に恩恵を受けるのはやはり圧倒的な性能を誇るカメラ機能でしょう。
スマホとしてはもう十分なところまできているXperiaのカメラですが、その歩みは止まりません。最新モデルとなるXperia Z5では、これまで以上に大きな進化を遂げているといいます。Xperiaはどこへ向かうのか、スマホのカメラとはどうあるべきなのか。Xperia Z5でカメラの開発を担当した山本さんにお話を伺いました。
劇的に向上したAF性能
ギズモード編集部(以下ギズ):Xperiaのカメラは毎回、進化を続けており、画質や機能ではすでに専用機に迫る勢いですよね。Xperia Z5でさらに進化したと聞きました。特に進化したポイントはどこなのでしょうか。山本さん:細かいところまで含めると、あらゆる点が進化しているのですが、ひとつだけ挙げるなら「AF(オートフォーカス)」ですね。ギズ:たしかにAFはカメラとくらべるとどうしてもスマートフォンは弱い部分でしたね。どれくらい向上したのでしょうか。山本さん:体感的なものなのですが、前機種までのAFは、もっとも悪条件でピントが合うまでに数秒かかることもあったというご指摘を受けています。それに対してZ5ではベストケースでピントが合うまでに0.03秒を達成しています。ギズ:スマートフォンのAFで0.03秒は驚異的といっていいスピードですね。なぜそれほどまでAFスピードを上げることができたのですか。山本さん:AFの仕組み自体が変わったのです。これまでは「コントラストAF」という仕組みでピントを合わせていました。これはレンズを動かしながら、ピントを合わせたい部分のコントラストがもっとも高くなったところを探すというやり方です。ピントが合っていないと被写体はぼやけるので、境界線のコントラストが低くなりますが、ピントが合うと境界線がくっきりするのでコントラストは高くなります。もっともコントラストが高くなれば、ピントが合っていると判断できるのです。ところが、この方法ではレンズの可動範囲すべてのコントラストを見ないといけないので、どうしてもレンズが動く時間がかかってしまい、高速でピントを合わせることができませんでした。そこでZ5では、像面位相差AFという新しい方法を取り入れています。
暗所撮影でも力を発揮するハイブリッドAF
ギズ:しかし、速度は上がっても精度はどうなのでしょうか。精度に関してはコントラストで見た方が正確な場面もありそうですが。速度と精度を両立させることはできるのですか?山本さん:そこは像面位相差AFとコントラストAFを両方使うことで、いいところどりをしています。もし片方で精度が出なくても、もう片方のやり方でピントを合わせることができるのです。独自開発したAF方式で、「ハイブリッドAF」と呼んでいます。加えて、画面の全面でAFができるところもAFの進化です。像面位相差AFの精度がもっとも出るのは画面の中心で、周辺部分は精度が出にくいのですが、お客様にとっては、画面のどこだろうとフォーカスしたいですよね。ですからXperia Z5は画面の周辺部分まで含めて像面位相差AFの精度が出るようにしています。細かすぎる部分なのでカタログには載せにくいのですが(笑)、そういったところで感じていただけると思います。
「これ以上はどうやっても無理」というところまで突き詰めることができた
ギズ:お話を伺っているとAFが大きく進化したことがわかりました。しかし、ここまで進化させるのはかなり大変だったのでは。山本さん:開発当初はベストケースでAF速度0.1秒は切りたいよねという話をしていて、その目標は開発中に超えることができました。そこで「もう一声」となり、無駄を削りまくってAF速度を追求していったのです。この無駄を削る作業が本当に大変で、AFそのものだけでなく、ホスト処理をどうするかというAFアルゴリズムの詳細仕様の部分にまで突っ込んで注力しました。その結果、もう今のAFアルゴリズムの仕様ではこれ以上はどうやっても無理というところまで突き詰めることができました。乾いた雑巾を絞るような感覚でしたね(笑)。0.01秒の無駄もありません。ギズ:聞くだけでゾッとしますね(笑)。山本さん:カメラの心臓部であるイメージセンサーとカメラモジュールの開発チームと話し合って、AFを重視したカメラモジュールを一緒に開発できたのが大きかったですね。これはイメージセンサーも自社でつくっているソニーだからこそできたことだと思います。手ぶれ補正機能のおかげで下手なアクションカメラより使いやすい
ギズ:AF以外に進化したポイントはありますか?山本さん:クリアイメージズームという、通常のデジタルズームよりも綺麗なズームが5倍までできる機能を採用しています。それからUIも見やすくしました。たとえばボリュームキーがズーム機能になるのですが、それに気づかない方もいるので、一目でわかるようなインターフェースに改良していますね。ギズ:説明書を読まない人も多いですからね。山本さん:あとは動画の手ぶれ補正ですね。これは相当力を入れているところで、他社の追随を許さない優位性を持っています。Xperiaではもともと動画そのものの画を見てブレを補正していたのですが、Z5ではさらにレンズを駆動させるための「アクチュエータ」という装置の動作方式を変更することで、外的な要因から予想外の揺れが起きてもレンズを本来あるべき位置に戻すことができるようになっています。推奨はしていませんが、アクションカメラみたいな使い方をすると、下手なアクションカメラより使いやすいですよ(笑)。日常使いから、特別なイベントでも使えるカメラへ
ギズ:今回、AFや手ぶれ補正が大幅に改善されたわけですが、山本さんはXperiaのカメラをどんな方向に進化させていきたいと考えているのでしょうか。山本さん:Z1の頃から言われていたのが、「コンデジに追い付け追い越せ」ということでした。そのためにイメージセンサーを1/2.3インチにまで大きくして、デジカメでも使っているBIONZエンジンをXperia用に開発する「BIONZ for mobile」を搭載するなど性能を向上させてきました。それが約2年がたって、ある程度のところまではきたのかなと思っています。一方で、結婚式などイベントに行くと、まだコンデジを持っているお客さんは多いんですよね。日常的にはスマホで十分だけど、イベントはやっぱりカメラで撮ろう、となる。今後はそちらに入っていきたいと考えています。ギズ:記録用だけでなく、大事な場面を撮るカメラとしても使ってほしいということですね。そういう場面で使われるためには、「オートで撮れて」、しかも「失敗しないカメラ」であることが大事ではないかと思います。山本さん:まさに、それが今回のXperia Z5の進化のポイントですね。私は「失敗写真」とは「ピントが合っていない写真」だと考えています。高速かつ高精度なAFと強力な手ぶれ補正は、写真の失敗を減らしてくれるはずです。お客様によっては、それらをマニュアルで設定することで撮影を楽しんでいただけるのですが、しかし大半のお客様が使われるのはオートです。オートは誰にでも失敗なく使えることが大事で、あまり尖りすぎるのも良くないのではと考えています。そう考えると、1/2.3インチのイメージセンサーにF2という明るいレンズの組み合わせはちょうどいいのではないでしょうか。
ギズ:ただ、大きなイメージセンサーには暗所ノイズを減らして綺麗な写真が撮れるメリットもありますよね。山本さん:そうですね。イメージセンサーの感度の進化は大きいので、まずはセンサーサイズそのままに画質を向上させる方向へ進んでいきたいですね。すでに重ねあわせ処理でノイズを低減する機能があります。これをもっと強化してノイズを減らしていきたいですね。ギズ:ピントが外れず、ノイズや手ぶれもない写真が手軽にオートで撮れるようになると、失敗したくないイベントでも積極的に使いたくなります。その方向に進化したのがXperia Z5というわけですね。山本さん:記録するだけでなく、思い出も撮ってほしいという意味を込めて、私たちは「思い出画質」という言葉を作りました。ライフログから思い出画質へ進むことができたので、ここからはさらにデジタル一眼が担っているアートも視野に入れつつ、さらにステップアップしていきます。大切な時間だからこそ、Xperiaで残す
画質を極めたXperiaが次に向かうのは「失敗写真」のない世界。劇的に進化したAFは、私たちがスマートフォンのカメラに対して抱いていた不安を完璧に払拭してくれました。Xperia Z5のカメラを体験すれば、「失敗できない大切な場面だから、Xperiaで撮ろう」と思うようになるはずです。
関連記事:構想3年、第4世代。Z5の「Xperia™のベスト版」ディスプレイは日常で活きる、Xperia™ Z5に見る、工業デザインの「意地」と「美学」
source: ソニーモバイル
(山田井ユウキ)