日本へのラブレター! 『パシフィック・リム』に見るデル・トロ式ロボット美学を紐解く!

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  • author 武者良太
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日本へのラブレター! 『パシフィック・リム』に見るデル・トロ式ロボット美学を紐解く!

デル・トロの美学=イェーガー。

地球を侵略するために海底から攻めてきたKAIJUに対して、人類の英知でもって作り上げた巨大ロボット「イェーガー」で立ち向かうという、男子のDNAそのものが喜びそうな世紀の一戦『パシフィック・リム』がついに幕を開けます。

ギズモードとしてもこの夏イチオシの映画です! ギズだけのためやで! アップル公式PVを大阪弁にしちゃうあの人が、映画『パシフィック・リム』の大阪弁トレイラーを制作!という記事を作っちゃったくらいですから!

しかし怪獣vsロボットって、まるでカツカレー。どっちもそれぞれ美味しいのに、一緒にしたらまあ! みたいな。アラフィフのギレルモ・デル・トロ監督は10代の頃に『マグマ大使』、『ウルトラマン』といった特撮、そして『鉄人28号』のようなアニメを体験したそうなので、この美味しすぎるレシピが生まれたのは必然というべきなのでしょう。

というわけで本日は、40~50代の特撮派も、30~40代のロボットアニメ全盛世代も必見すぎる『パシフィック・リム』の中でも注目すべき、ギレルモ・デル・トロ監督のこだわりや美学がぎっしりと詰まっているイェーガーのデザインを中心に、彼が考えるロボット美学についてお勉強していきましょう。

教材はこちらの動画。Mech Warrior、すなわち機械の兵士というキーワードにも心震えますね!

巨大なロボットそのものがヒーロー

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パシフィック・リムに登場する巨大ロボットであるイェーガーは、全長75〜80m級の超ド級サイズ。動画のなかの言葉を借りるなら「歩くビルディング」。

巨大ロボットが登場する日本のコンテンツはたくさんありますが、欧米ではごく少数の模様。小説『宇宙の戦士』のパワードスーツや、『超時空要塞マクロス』のバルキリーなどをモチーフとするボードゲーム『メックウォーリア』など、人間が扱う兵器という位置づけでロボットを描いているモノが多いようです。

ロボット生命体たる『トランスフォーマー』においても、そのサイズは総司令官オプティマス・プライム(コンボイ)ですら身長8.5m。人間の視点で見て「でかい! 強そう!」なサイズ感ですし。

だからこそオタクガイジンなギレルモ・デル・トロ監督は、『マジンガーZ』に『大空魔竜ガイキング』、『鉄人28号』などにある、日本のロボットコンテンツに根付く「ロボットそのものがヒーロー」という図式をピックアップ。それを強く描くために歩くビルディングたる巨大なロボットを『パシフィック・リム』の世界に投下したのでしょう。

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劇中に登場する「イェーガー」がヒーローたるロボットの象徴になっています。

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強大なボディ&パワーを持つロボット=イェーガーが既存の欧米映画にはなかった圧倒感をアピールします。

若い頃に見たアニメに影響を受けたデル・トロ監督

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僕らにもありませんか? 子供の頃のあこがれ…というかトラウマ級の、心の中に残ったインパクトが今なお自分の原動力となっていることって。

人によっては音楽だったり、スポーツ選手だったり、洋画だったり。それがギレルモ・デル・トロ監督は日本のアニメだったそうです。

そして煌びやかだけどノスタルジーな原風景を現代の知識・経験でもって壊して、そして再構築したのが『パシフィック・リム』ということなるのでしょう。。

そういえば同様のエッセンスは、『進撃の巨人』や『GANTZ』にも強く感じます。日本の70~80年代の子供向けコンテンツを味わってきた世代が作るリアリティが、いま一番面白いのかも…?

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大きく、重いロボットだから現場まで空輸で運ぶ必要があるのでしょう。SFだけど、リアルを感じさせます。

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各国がそれぞれ開発したイェーガー。国vs.国の開発競争があったことも見えてきます。

デザイナーに課した、たった1つのルール

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同じ視点を持つスタッフを、ということなのでしょうか。アニメ好きのデザイナーを起用したギレルモ・デル・トロ監督。

彼らに対してギレルモ・デル・トロ監督は、1つだけルールを課します。それは「何かを参考にしないこと」。

『パシフィック・リム』という映画の世界観の中で、どんなデザインのロボットがいるべきなのか。デザイナーの潜在意識の中から出てくるインスピレーションを重視しています。

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コヨーテ・タンゴのキャノン

その結果の1つが、『機動戦士ガンダム』のガンキャノンや『太陽の牙ダグラム』を彷彿をさせるキャノンが勇ましいコヨーテ・タンゴ。デザイナーとギレルモ・デル・トロ監督の共通意識として「カノン砲は男のロマン!」があったに違いありません。

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好き勝手にやってもいい。ただし、オリジナルであること。

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その中から生まれたロボットたちをさらにブラッシュアップしていきます。

輪郭から細部のデザインへと進めていく

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たとえリアリティを感じる構造であっても、ルックスに物語性がなければ魅力は生まれません。

ヒーロー然としたルックスと、映画世界内のテクノロジーあっての機能美、すなわちプロダクトデザインを追求させるためでしょう。まずは40~50体のロボットの外郭形状から煮詰めていきます。

骨格となるデザイン画を決めてから構造や素材をイメージ。この行程はスーパーカーの物作りに近いのではないでしょうか。

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デザイン画から輪郭を作成。

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装甲、関節、駆動部などを後から決めていく。

「かっこいいとはこういうカタチだ!」を地でいく主人公的イェーガー「ジプシー・デンジャー」

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日本のコンテンツでいうなら「」。それもシャアのピンクではなく、特撮ヒーローものの燃える赤色のポジションに立つ「ジプシー・デンジャー」。ヒーローかつリーダーの印象を持たせるため、西部のガンマンやカウボーイのような体格にデザインされました。

そう言われてみれば確かに首も、腕も、腿も太い。そうか! 「ジプシー・デンジャー」は西部劇のヒーロー、ジョン・ウェインだったんだ! 派手な殴り合いも納得がいきます!

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ジプシー・デンジャーのデザインをさらに細かく見ていきましょう。甲鉄板の外装で、タンカーのような雄大な雰囲気を印象づけています。トレイラーでも見ることができるタンカーを振るって攻撃するという一連のムーブも含め、「頼れるお父さん」なイメージも。

映画世界の中では、1世代前の型遅れ品となっていますが、その力感は使い込まれた道具が発するオーラと同じですよね。

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各駆動部を動かすための油圧(らしき)ピストンに配管、ギアに…バ、バネにしか見えないパーツもありますが、細部にわたってギレルモ・デル・トロ監督のこだわりがインプットされています。

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ま! 個人的には「クリムゾン・タイフーン」がイチオシですけどね! モノアイでアシンメトリーってカッコいいよね!

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でも人の真似ではダメ。過去に見たことがあるようなものではアウト。ギレルモ・デル・トロ監督の美意識がロボット=イェーガーにぎっしりとつまっているんですね。

デル・トロから日本へのラブレター

それが『パシフィック・リム』

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自らオタクガイジンと言ってしまうほど日本LOVEなギレルモ・デル・トロ監督。「メキシコからハリウッドで育ったKAIJU映画として、日本に帰郷した」とも語ったそうです。

そう、『パシフィック・リム』はロボットだけではなく、敵キャラ「KAIJU」のデザイン、動き、技にも注目な作品なんです。もちろん人間模様のドラマパートも、いい意味で突っ込みドコロが多くてGOOD!

視点を変えて、字幕・吹き替えでも別々に、さらには3D、2D、IMAXとそれぞれに見て楽しめる『パシフィック・リム』本日から公開ですよ!

8月9日(金) 3D/2D同時公開|映画『パシフィック・リム』公式サイト

(武者良太)